体調が悪いと人に言えない

今日仕事を早退してしまった。
原因はおそらく熱中症
家にはエアコンがなく、それでも扇風機や保冷剤でなんとかしのいでいるが、職場は広いフロアに果たしてあれはエアコンと呼べるのか?と思われる巨大送風機が壁際に置かれているだけ。もちろんその冷風の恩恵にあやかれるのは、巨大送風機の近くで仕事をしている一部の人たちだけ。それでも常に動き回る仕事なので汗だくになる。
そんな環境のなか、連日気温は30度超え。すでに部署内だけで数人は熱中症と思われる症状で休んでいた。誰もが熱中症に罹ってもおかしくはない環境。
しかし私は生育環境の中で、体調不良を人前に晒すことに抵抗が生まれてしまった。
人前でも普段通りに振舞ってしまう、自動制御機能が備わってしまった。
加えて私は人に「体調が悪い」と伝えることができない。
自分の体調悪化をどういった文言で伝えていいかがわからないのだ。
「具合が悪いです」「で?みんなそんなもんだよ」と、一蹴されるのが怖い。
同じ環境で仕事をしてても元気な人ももちろんいる。なので熱中症に罹るのは、私の自己管理の問題なのでは?これぐらいの不調はふつうなのでは?と思ってしまって、口に出せないのだ。

そして数年前に一度、職場の繁忙期に救急搬送されてしまったことがあった。
周りの人は文句一つ言うどころか心配してくれた。驚いた。職場に多大な迷惑をかけたのに。本心ではどう思ってるかわからないが、労う言葉をかけてくれる人がいることに、不甲斐なさとありがたさで涙が止まらなくなった。

実家に住んでいたころは、母親が大病で手術をしたこともあってか、大概の不調は「誰でもある」と一蹴された。
だから私は、この程度の不調はなんでもないことなんだと思いやりすごしてきた。そして倒れて救急搬送という大迷惑をかけることとなった。
具合が悪くて居間のソファーで横になっていると「具合が悪いなら部屋で寝ろ」と言われた。
たしかに病人がソファーを占領していたら邪魔でしかない。辛気臭い顔を見せるなとも言われた。
だから私はなるべくそういった不調や落ち込みを人前では出さないように努めてきた。そしていつしか、どんなに具合が悪くても、いつも通りにへらへらと接する術を身につけた。

今日、3時間悩みに悩んで、もうこれは限界だと察し、タイミングを見計らって上司にその趣旨を伝えた。
「具合悪いなら具合悪そうにしなきゃだめだよ」
上司は言った。
いいんだ。具合悪そうなところを見せても相手が不快になったりしないのか。むしろ気づかずに手遅れになった方が会社的には迷惑だしな。

しかし体調不良を表に出すにはまだ抵抗がある。というより、どうありのままの状態を人前に晒すかどうか、考えてしまうくらいにはできなくなっていた。
倒れるくらいしか周りの人間に自分は体調がよろしくなかったと伝える手段しか持ち合わせていなかった。
そう考えると、今回自主的に早退したのは懸命な判断であり、すこはは学習したのかもしれない。

それでも罪悪感に苛まれている。
健康で従事できる状態にならなければと。
私一人が減った程度でも、周りの従業員には負担がかかる。私程度の人間すら戦力にカウントされるほど、今の時期は人手が足りないのだ。

明日は公休なので、明後日職場に行ったらとにかく平謝りしなければならない。
体調を崩すことは悪だ、罪だ。そういった意識は自分に対してにしか思わない。体調を崩すことが怖い。
いよいよやばい、デッドラインすら見極められなかった。ほんとうに今日早退したことは、正しかったのか。あのまま定時まで働けたのではないのか。
頭痛、めまいくらい暑けりゃ普通だろう。でも吐き気と意識が朦朧としだしてさすがにまずいかもと思った。倒れてからではもっと迷惑がかかる。
午前中で早退してきたが、今でも考えてしまう。あの時の決断は正しかったのか。それは誰にもわからないし、ジャッジできるものではないけど。
自分の身体の限界がわからない。