同人アカウントを消したら不眠が治ったはなし

去年の6月から始めた、某ジャンルの同人アカウントを消した。

同人アカウントを作った理由は二つ。

ひとつは二次創作のため。

10年ぶりに二次創作を再開したが、時はホムペ時代からTwitterやpixivへ。

この時はまだ、同志と繋がりたい!という気持ちマンマンだった。今思えば、本を出してる同人作家の真似事をしたかったんだろう。マシュマロとか設置して、感想をねだったりとかね。

 

二つ目は、公式が週刊連載のため、アプリで日付変更と同時に最新話をチェックするので、感想を叫ぶための配慮として。

プロフにちゃんと「息をするように本誌のネタバレをします」と注意書きも怠らない。こういう配慮は同じジャンルの他のアカウントのプロフを見て学んだ。

なんせ、約10年ぶりに二次創作界隈に戻ってきたわけで、あの頃とはすっかり景色が変わってしまっていた。

駅の改札が、切符から交通系ICに変わってたぐらいの違い。

まあそんなんで、手探りで最近の二次創作ルールを学びつつ、適応しようとしていたわけだ。

 

だが徐々に違和感を覚える。

アカウントを分ける以前に利用していた、いわゆる本アカウント(本垢)では感じたことのない、異質な空気。

本垢でも二次創作ではないが、コスプレや被写体など、創作活動には身を置いていた。絵師だってフォローしてた。

けどなんだここ。しょっちゅうこの人たち長文でリプし合ってない?お互いを褒め殺してない?それこの前もやってなかった?てか別にそういうの見たくてフォローしたんじゃないのになあ…。あれ、なんだこのモヤモヤした気持ち…。

わー、大手の字書きの「落書き」と称したSS(ショートストーリー)が流れてきたー!落書きで、ふぁぼ3桁?あ…落書きで…さすがっすね…。いや、自分は読んだら自信なくすんでいいっす…。

「明日イベントだから、今日のうちに子供たちと出かけてごはんの準備してる〜」

あ、お子さんがいて絵も上手くて本も出して…しかも家事育児もちゃんとこなしてらっしゃる…。私、本も出してないのに、何一つまともにできてねーや…。

「家族で沖縄〜!(海の写真)」

なんだよこの人…。絵も上手くて本も出してマシュマロでチヤホヤされて、なおかつ家庭円満ってか?ねぇどんな気持ち?趣味もリアルも全て揃ってて、必ずどこかに居場所があるって、どんな気持ち?どこにいっても、自分を受け止めてくれる人がいるってどんな気持ち?

このジャンルにハマってロシア行っちゃったしなー。って、え?家庭があって、子供もいて、それで趣味に何十万て使えるって普通なの?

みんなそれが普通の生活なの?毎月旅行に行ったり、デパコスをコンビニで買い物感覚で買ったり、これがリアルな生活の質なの?

絵や文章の実力と、私生活の質は比例するの?

ねぇそもそも私って、この人たちから見たら棄民じゃない?あ、私って、世間から弾かれた棄民だったんだ。

絵も文章もうまくない、社会的に底辺。何一つまともにできやしない。良い部分だけを切り取って投稿するような、良い部分すらないよ。全部ぐちゃぐちゃの汚泥だよ。あーもうこれあれだ、私、生きてちゃいけない人間だわ。ぼんやりと死にたいと思うのは年中無休だけど、これ今すぐ死ななきゃ。こんな人間、今すぐ死ななきゃ。存在しちゃだめだわ。何者にもなれなかった。何者でもない自分はいちゃいけない。この世界にいる必要なんてない。死ね、今すぐ死ななきゃならないんだよ!おまえは!おまえみたいな何もない人間は!

 

…ってところまできた。

この時点で1ヶ月半不眠が続き、睡眠薬が手放せなくなっていた。いつでもどこでも寝られることが、唯一の長所だった私が、布団に入ると寝方を忘れてしまっていた。

そして先日、今すぐ死ななきゃという衝動が、今すぐ同人アカウントを消したい!という衝動へと変わり、アカウントを消した。

最初は、しばらくしたら消しますというアナウンスをしたものの、その六時間後には衝動に耐えきれず消した。

何者でもない私が居続けるには辛い場所だった。

楽しいこともあったけど。でもこの雰囲気、何かに似てる…と思ったら、学校だ。学校の教室だ。

私は教室の隅で、ひとりで妄想を打ち込んでいるだけでも満足だったのに、周りの生徒の楽しそうな話し声が自然と耳に入ってくる。

仲間を作り、グループにならなければ孤独よりも疎外感に襲われる。

数値化された評価でスクールカーストが出来上がる。私が耐えられなかった理由はそこにあったのかもしれない。

 

不思議なことに同人アカウントを消したら不眠がぴたりと治った。薬がなくても、以前のようにすんなり眠ることができる。

不眠の原因がまさか同人アカウントだったとは自分でも思わなかった。そこまで追い詰められていたのかと思うとゾッとする。

今はpixivと個人サイトと、壁打ちアカウントだけで交流を目的とせず、不登校のような状態である。たまにpixivに作品を投稿することは、宿題やレポートを提出しに行く、フリースクールのような気分だ。だが結果的に不眠も治ったし、よかったと思う。

あそこは学校が苦手な私が居られる場所ではなかったんだと。