記憶の砦

熱中症の症状の中に意識障害がある。
職場も家も30度超えの暑さなので、熱中症による意識障害もやぶさかではない。加えてベンゾ系の薬を服用しているので、その副作用のどちらかか。あるいは加齢によるものか。

今日職場で午前中、パートさんからパンをいただいた。それを自分のロッカーにしまい再び仕事に戻った。
定時になり着替えのためにロッカーを開けた。記憶にないパンがそこにあった。
「パンがある!いつもらったやつこれ?」
「今日ですよ!」
同僚も私と一緒にパートさんからパンをいただいていた。
この同僚の言葉がなかったら、私はしばらくこのパンについての記憶を辿っていただろう。
うろ覚えどころではない。
本気でいつの間にパンが。袋に詰められていたのでパートさんからいただいたものだということはわかったが、それがいつのことだったのか、全く思い出せなかったのだ。

思い返してみれば、午前中の仕事の内容もあやふやだった。
だいたい午前中は毎日同じ作業をしているのだが、それが今日のことなのか昨日のことなのか一昨日のことなのかがわからない。

記憶は、新しいものは一旦海馬という部分にストックされ、カテゴライズしてから大脳皮質へと送られる。
私には過去の記憶、去年の夏は何をしたかなどのおおまかな記憶はある。
しかし数時間前の記憶がなくなっていたりあやふやだったりするのだ。

脳科学にはまったくあかるくないが、前途の海馬と大脳皮質の話からすると、おそらく海馬に何か問題が起きているのかもしれない。

わりと記憶が曖昧なことはこれまでもあったが、前回の時間トリップといい、今回もこれほどまでに記憶がスパッと消えているのにはわりと驚いた。

ああ、ついにここまできてしまったか。という感じだ。
記憶が失われていても、今日のようなパンがロッカーに入っているといった、物理的な証拠がなければ思い出すことどころか、忘れていたことさえ思い出せなかっただろう。
今回はたまたまロッカーに入れたパンと同僚の言葉で辛うじてぼんやりとだが思い出せた。しかし、忘れてしまったことに気づいていない記憶もあるだろう。

私の脳は今どんな状態にあるのだろう。