デレマスと私たちの親和性

アイドルである彼女たちと、平凡な私との間に共通点などあるのか。

 

まずはデレマス、「アイドルマスターシンデレラガールズ」について、ネタバレを含まない程度のあらすじを話そう。

シンデレラプロジェクトという新たなプロジェクトを立ち上げたプロデューサー(通称武内P。プロデューサーにはキャラクター名がないので、声優の名前から武内Pと呼ばれている)と、その武内Pにスカウトされたメンバーでまずは物語は進んでいく。

彼女たちの個性を生かす、武内Pの信念に基づき、彼女たちはそれぞれのユニットやソロで大きなステージでのライブを成功させた。というのが1期までの話。

その後2期では、シンデレラプロジェクトの存続に関わる出来事が起こるわけだが、1期から含め、彼女たちはほとんどがアイドルという以前に普通の女の子なのだ。

7話で本田未央というメンバーの自宅マンション(団地?)が登場するのだが、雨のせいもあり、エレベーターホールはほの暗く、町内会のお知らせと思われる掲示物貼られている掲示板も確認できる。彼女の部屋も至ってごく普通の部屋だ。アイドルだからといって、ファンシーな部屋というわけではない。事務所に与えられた寮で生活しているアイドルには、いかにもといった部屋も見受けられるが、そういった日常の風景を垣間見ることで、私は彼女たちに親近感を覚えた。

母親から結婚の催促をされるほどの年齢のアイドルもいる。彼女は永遠の17歳と謳い、築数十年と思われるアパートに住んでいる。

彼女たちはステージで華やかな衣装に身をまとうこともあれば、その裏では私たち一般人と大差ない生活を送っていたりもするのだ。

 

そんな彼女たちは個性的なメンバーとして集められたが故に、各々が別の目線、思想を持ち、それぞれに感じるものが時に真逆であったりする。

3人組ユニットとして初のミニライブに、メンバー全員が意気込んで挑んだ回だった。なんとかやりきったという表情のメンバーをよそに、理想としていたステージからの景色に残念な気持ちを抱いてしまう者もいた。それを不満と捉えてしまうには簡単だ。だが、それは他のメンバーが抱いた感情との違いにより、自己嫌悪に陥る結果となってしまう。

初のミニライブとしては上々な結果だっとも言えなくはない。応援に来てくれた友人達、ショッピングモールのステージの前で足を止めた買い物客。

たがそれは、思い描いていたアイドルのステージとは別の景色だった。

 

合宿を行った時には、プロデューサーからリーダーとして指名された一人のメンバーは、自分が他のメンバーをまとめ、引っ張っていかなければいけないプレッシャーに襲われる場面もあった。

 

同じユニットのメンバーが、別のプロジェクトに選抜され、焦燥感と嫉妬に近い感情を抱くも、それは表に出すには醜いものではないかと、胸の内で必死にその感情に対して否定した。

 

自分のアイデンティティだと自負していたものが、にわか知識のぼんやりとしたものであると実感しせられた、多田李衣菜。「ロック」という曖昧なカテゴライズに、自らの立ち位置が揺らぐ。本格的にバンド活動をしていた木村夏樹の姿に、自分のそれはロックなのかと軽率にロックを口にしていることに気がつく。同時に、参加中の二人組ユニットである相方は、ロックとは真逆のスタンスを強く意識していながらも、その強い個性が多田李衣菜の足を引っ張っているのかと葛藤する。

憧れだったロックテイストと、自負しているロックというカテゴリーとの差に、多田李衣菜も強く葛藤していた。

 

デレマスにはこういった個々のアイドル達が常に壁にぶち当たるシーンが多い。

そのストーリーの中で表現される心理描写は、視聴者であるだけの私にも覚えがあるものばかりだった。

私はもちろんアイドルではない。ただ、彼女たちの心理は、日常的に身近に存在する苦悩に近いものがあると、私は感じた。

嫉妬という感情は醜い部類に入るだろう。しかしその感情が芽生えているということは、事実でありそう思えてしまう要因はなんなのか。

彼女たちはステージでとびっきりキラキラと輝いている。それを見たファン達も思わず笑顔を輝かせる。

キラキラとしたアイドルとしての姿の裏側、影の部分を映し出しているだけのストーリーではない。それは、彼女たちアイドルが輝くために通らなければいけない輝きの延長であり、光を放つための熱量の源なのではないかと思う。

アイドルにしろ、何にしろ、人の心の中には形容できない感情と切磋する場面は少なくとも存在しているはずだ。

醜いと思える感情も、それを自己嫌悪してしまう日も、それは決して誰も否定できるものではない。

彼女たち、シンデレラガールズは、そんな灰被りだった姿を晒すことで、私の中にも確かにあった手に負えない葛藤を具現化してくれた。

視聴中、わかる!と何度も頷いた。

アイドルである前に、どこにでもいる人間である。その身近さに頑張ってほしいという気持ちが強くなる。

きっと、彼女たちの背中を押すことで自分を奮い立たせるといった、擬似的に鼓舞させられているのかもしれない。

そんな綺麗事では語れない、ただひたすらにデレマスというコンテンツが好きだという気持ちだけでハマっているのかもしれない。

 

ただひとつだけ言えることは、デレマス最高だから見てくれ!それだけである。